言葉の意味と使い方

「従前」「従来」「以前」の意味と違いは?使い分け方を解説!

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「従前の制度と比較して、下記の要件が大幅に緩和された」

「この作品は従前のものと一線を画している」

このように、ビジネスシーンやニュースなどで見聞きすることがある「従前」という言葉があります。

ちょっと難しい響きなので、意味がわからない、使ったことがないという人もいるかもしれません。

「従前」は前のことを表す言葉なのですが、他にも「従来」「以前」などの言葉はよく使われると思います。

それぞれに意味や使い方の違いがありますから、この機会に確認しておきましょう。

今回は、「従前」「従来」「以前」の意味と違いは?使い分け方を解説!についてご説明いたします!

「従前」の意味

「従前」は「今より前。これまで。以前」という意味です。

「じゅうぜん」と読みます。

  • 従前の
  • 従前どおり
  • 従前から

などの形で、「前から」「今より前の」といった意味を表します。

【例文】

  1. 従前の方式で行う。
  2. 今後も従前通り定期的に意見交換会を開きたい。
  3. 従前より様々なプロジェクトを進めてきました。

「従来」の意味

「従来」は「以前から今まで。これまで」という意味です。

「じゅうらい」と読みます。

日常的によく使う言葉だと思います。

こちらも

  • 従来の
  • 従来通り

などといった形で用いられます。

【例文】

  1. 従来の方法では到底不可能だ。
  2. 従来通りの事業モデルだけでは収益増は見込めない。
  3. 従来の常識を覆す新しいプロジェクトが進み出した。

「以前」の意味

「以前」は「その時から前。ずっと前」という意味です。

「いぜん」と読みます。

これも身近な言葉ですよね。

  • 以前……
  • 以前から
  • 以前の

など、いろいろな形で日常的に使うと思います。

【例文】

  1. 以前の規則では認められていなかった器具の使用が認められることとなった。
  2. 彼は以前から問題発言が多くトラブルメーカーである。
  3. 以前は申告書と一緒に領収書を提出する必要があった。

「従前」「従来」「以前」の違い

さて、「従前」も「従来」も「以前」も、今よりも過去のことを表すような言葉ですね。

非常に似ている言葉なので、違いもあまりなさそうです。

ですが、実は「従前」と「従来」、「以前」には意味の違いがあるのです。

  • 「従前」は「今よりも前」
  • 「従来」は「昔から今まで」
  • 「以前」は「基準となる時点を含んで、それより前」

というのが意味の違いです。

「従前」というのは主に過去のこと、あるいは現在より前(今まで)のことを表します。

それに対して「従来」は過去から今までのことを表すのです。

そして、「以前」はある時点を含んでそこよりも前のことを指します。

どれも「前」という点では共通していますので、あまり区別して考えたことがなかった人も多いと思います。

ですが、実際にはこのようなニュアンスの違いがあるのだということをぜひ理解して使い分けてみましょう。

「従前」と「以前」は「従前より」「以前から」といった使い方をします。

「従前より(から)」「以前より(から)」は「前から」「昔から」という意味を表します。

ですが、「従来」は「従来から」とか「従来より」という使い方はしません。

実際には「従来より」などと使われている文書やネット記事などもよく目にするのですが、これは誤用です。

「従来」には「昔から現在まで」という、「から」という意味が含まれているため重言になるのです。

こうしたことも上記の意味の違いと関係しているんですね。

「従前」「従来」「以前」の使い分け方

「従前」と「従来」と「以前」は似ている言葉ですが、「従前」は「今より前」、「従来」は「以前から今まで」、「以前」は「ある時点を含んでそれより前」というニュアンスの違いがあります。

例文で使い分け方を確認しておきましょう。

【例文】

  1. 従前の就業規則では副業・兼業は禁止されていた。(過去の規則)
  2. 彼らは従前の方法を漫然と踏襲しているだけだ。(過去の方法)
  3. この診断法では従来の1万倍の感度でウィルスが検出できる。(過去から今までに行われていた診断法)
  4. 従来の方法の問題点が指摘された。(過去から今までに使われていた方法)
  5. 彼が監督になり、以前の指導法とは大きく異なる部分もあった。(監督になったときより前)
  6. 以前はコーヒーは苦手だったが、この店で飲んでから好きになった。(この店のコーヒーを飲むより前)

また、「従前」はあまりくだけた会話の中などでは使わない言葉です。

かたい印象の言葉なので、いわゆるお役所言葉、公文書や条例の中などで使われるような言葉です。

また、政治や経済などかたい内容のニュースでも耳にします。

日常会話では「従前」よりも「従来」や「以前」を使うことがほとんどだと思います。

ただしビジネスシーンでは、こうした改まった言葉もよく使うでしょうから、この機会にしっかり覚えておきましょう。

「従前」「従来」「以前」の類疑語

「従前」と「従来」と「以前」の類義語には次のようなものがあります。

  • これまで
  • 古来(昔から今まで、古くから)
  • 旧来(昔から行われていること、以前から)

「従前」「従来」「以前」の対義語

「従前」と「従来」の対義語は「向後」「今後」です。

  • 「向後」は「これからのち」
  • 「今後」は「現在より後。これから先」

という意味です。

「以前」の対義語は「以降」「以後」です。

  • 「以降」は「あるときより後」
  • 「以後」は「これから先。その時よりのち」

という意味です。

まとめ

「従前」「従来」「以前」は似たような言葉なので、使い分けが難しいですね。

今回見てきたような意味、ニュアンスの違いは確かにあるのですが、実際にはどれも同じような意味で使われてしまっていることが多いと思います。

ですが、それぞれの言葉の意味を知っておけば、例えば「従来から」とは言わないでしょう。

また、過去のある時点よりも前ということを言いたい時は「以前」を使うのが良いとわかりますね。

少しややこしいかもしれませんが、ぜひ例文などを参考にしてそれぞれの違いを知っておかれるとよいでしょう。

最後までお読みくださりありがとうございました!

 

ABOUT ME
三角 彩子
大学卒業後、出版社にて秘書・経理補助などの職種を経験。 退職後は塾講師、高校国語(現代文、古文、漢文) の添削指導員などを経て、長女を出産後は在宅でライターをしています。 社会人経験や国語の知識を活かし、秘書検定やビジネスマナー、国語などに関するライティングを主に行なっています。
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