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「狷介」の意味と使い方!「性、狷介、自ら恃む所頗る厚く」とは?【山月記】

「狷介」の意味と使い方!「性、狷介、自ら恃む所頗る厚く」とは?【山月記】

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中島敦の短編小説、『山月記』は高校の国語で扱われることも多く、一度は読んだことがあるという人が多いのではないでしょうか。

教科書の定番『山月記』ですが、その内容はなかなか難しい語句が多く、初めて読むと意味がわからないところも多いんですよね。

中でも冒頭に出てくる「狷介」という言葉、なかなか普段の生活では使いませんよね。

難しい印象ですが、意味を知れば仕事や日常の場で使うこともできる言葉です。

ぜひこの機会に確認しておきましょう。

今回は、「狷介」の意味と使い方!「性、狷介、自ら恃む所頗る厚く」とは?【山月記】についてご説明いたします!

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「狷介」の意味

「狷介」は「頑固で自分の信じるところを固く守り、他人に心を開こうとしないこと」という意味です。

「けんかい」と読みます。

「狷介」の「狷」は「こころがせまい。気が短い」などの意味を持つ漢字です。

「狷介」以外ではあまり見かけませんが、他にも

  • 「狂狷(いちずに理想に走り自分の意思を曲げないこと)」
  • 「狷狭(気が短く心が狭いこと)」

といった熟語もあります。

「介」の方は「紹介」「介護」など、日常的によく目にする漢字ですね。

「間に入る」「助ける」などの意味がある漢字ですが、それ以外に「かたい」「固く身を守る」といった意味があります。

「心が狭い。気が短い」の「狷」と「固く身を守る」の「介」ということですね。

「狷介」は頑固で自分の考えに固執する、人の考えを素直に聞かないという性質を表す言葉なんですね。

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「狷介」の使い方

「狷介」は自分の意思を曲げず、他人に和合しない頑固なことを表す言葉です。

「狷介な」「狷介さ」といった使い方が主で、大抵の場合悪い意味で使います。

まれに「他人に惑わされず自分の意思をしっかり持っている」といういいニュアンスで使われることもあります。

ですが、基本的には「頑固で他人と交わろうとしない」というような悪い意味で使う言葉ですから、人に向かって褒め言葉のつもりで「狷介ですね!」などと言うのは避けたほうがよいでしょう。

【例文】

  1. 彼は狷介な人だ。
  2. 絶対に自分の意見を曲げない彼女の狷介さにはまいったよ。
  3. 私は狷介な性格だから新しい環境でうまく馴染めるとは思わない。
  4. 彼は立派な業績を残したが、非常に狷介な人物であったと言われている。

「狷介」を使った四字熟語には次のようなものがあります。

  • 狷介不羈(けんかいふき。自分の意思を固く守って何者にも束縛されないこと)
  • 狷介固陋(けんかいころう。頑なに自分の意思を守って、人のことを受け入れないこと)
  • 狷介孤高(けんかいここう。自分の意思を守って超然として気高くある様子)
  • 狷介不屈(けんかいふくつ。自分の意思を守って志を変えず、他に屈しないこと)

「狷介孤高」「狷介不屈」などは意思が強くて他に負けないと言うようないい意味で使われていますね。

スピーチなどでも使われる言葉です。

「性、狷介、自ら恃む所頗る厚く」とは?

『山月記』の冒頭部分にも「狷介」は出てきます。

隴西の李徴は博学才穎、天宝の末年、若くして名を虎榜に連ね、ついで江南尉に補せられたが、性、狷介、自ら恃むところ頗る厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしなかった。

とっても難しいですよね(笑)。

簡単に現代語に訳すと

隴西出身の李徴は、とても博学で賢かった。天宝の末年には、若くして上級役人の試験に受かり、江南地方の軍事や警察業務を担当する役人に任命された。しかし、彼の性格は頑固で人に心を開かず自信過剰であり、下っ端の役人の地位では満足しなかった。

となります。

「性、狷介、自ら恃む所頗る厚く」とありますが、これは「性格が狷介で自分の能力に過剰な自信を持っている」ということになります。

「性」は「性格」ですね。

頑固で人と心を通じ合わせず、その上プライドが高いというかなり嫌な性格です(笑)。

「狷介」などの語句を使うことで、出だしの一文だけで、これだけ李徴の困った性格をズバリと表すことができたのですね。

「狷介」の類義語

「狷介」の類義語には次のようなものがあります。

  • 頑固(かたくなで、なかなか自分の態度や考えを改めようとしないこと)
  • 意地っ張り(強情で、自分の思うことをどうしても変えようとしないこと)
  • 意固地(つまらないことに意地をはり通すこと)
  • 固陋(古いものに執着し、新しいものを受け入れようとしないこと)
  • 強情(意地が強く、一度こうと決めたらそれを守り通す態度、様子)
  • 一徹(思い込んだらあくまでそれを通そうとすること)
  • 片意地(頑固に自分の考えを押し通すこと)
  • かたくな(他人に構わず自分の思い込みを保つ態度)
  • 頑迷(頑固で物の道理がわからないこと)
  • 偏屈(性質が素直でなくねじけていること)

他にも色々頑固な人のことを表す言葉はありますので、調べてみるのも面白い(?)でしょう。

「狷介」の対義語

「狷介」の対義語には次のようなものがあります。

  • 蘊藉(うんしゃ。態度などがおだやかでゆったりしていること)
  • 円満(えんまん。物事の様子や人柄などが調和がとれていておだやかなこと)

当たり前ですが、「狷介」とは全く逆で、優しげなゆったりした感じがする、いい言葉ですね(笑)。

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まとめ

「狷介」は悪い意味で使うことが多い言葉です。

李徴のようにものすごく「狷介」な人は少ないかもしれませんが、頑固な人や他人と打ち解けない人はどこにでもいるものです。

また、自分の意志を貫くことも時には必要ですから、「狷介」が必ずしも悪いわけではありません。

「狷介」という言葉の意味をよく理解して、正しく使っていきましょう。

最後までお読みくださりありがとうございました!

ABOUT ME
三角 彩子
大学卒業後、出版社にて秘書・経理補助などの職種を経験。 退職後は塾講師、高校国語(現代文、古文、漢文) の添削指導員などを経て、長女を出産後は在宅でライターをしています。 社会人経験や国語の知識を活かし、秘書検定やビジネスマナー、国語などに関するライティングを主に行なっています。
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