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「憮然として立ち去った」
この文章をどう理解しますか?
おそらく、「この人は、何か腹立たしいことがあって怒って立ち去ったんだな」と思った人が多いのではないでしょうか。
じつは、この「憮然」、「腹をたてている」という意味ではないんです。
「憮然」は誤用されることが非常に多い言葉なので、ぜひ本当の意味を確認しておきましょう。
また、似た言葉に「悄然」がありますが、どうちがうのでしょうか。
今回は、「憮然」の本当の意味と使い方!「悄然」との違いは?についてご説明いたします!
「憮然」の意味
「憮然」は「失望・落胆してどうすることもできないでいるさま」「意外なことに驚き呆れているさま」という意味です。
「ぶぜん」と読みます。
「憮然」は誤用されていることが多い言葉なので、本当の意味を知って「あれっ?」と意外に思った人も多いかもしれませんね。
「憮」は「がっかりする」「驚きあきれる」という意味の漢字です。
「然」は状態を表す語を作る漢字です。
漢字の意味からも「憮然」は「がっかりする状態」「驚きあきれる状態」ということになりますね。
「憮然」は、本来は失望したり不満に思ったりしてむなしくやりきれない思いでいるさまや、意外なことにあやしみ驚くさまを表す言葉ですからしっかり覚えておきましょう。
「憮然」の誤用
「憮然」の本当の意味を意外に思った人も多いと思います。
「憮然」は本当の意味とは違う意味で使われていることが非常に多い言葉なんです。
文化庁による平成19年度「国語に関する世論調査」では、「失望してぼんやりとしているさま」という本来の意味で使っている人が17.1パーセントでした。
それに対し、「腹を立てている様子」という本来の意味ではない使い方をしている人が70.8パーセントでした。
つまり、「憮然」は本来の意味ではない「腹を立てている様子」として使われることがほとんどだと言ってよいでしょう。
文化庁月報(平成23年8月号)では、この原因を「憮(ぶ)」という音が「ぶうぶう言う」「ぶつぶつ言う」などを連想させるからではないか、また「ぼんやりしている様子」は「呆然」などを使うのが一般的なので「憮然」と「ぼんやりしている様子」が結びつきにくいのではないかという考察がなされています。
「憮然」は「腹を立てている様子」という間違った意味の方が一般的になってしまっていますので、使い方には気をつけたいところです。
正しい意味で使おうと思っていても、誤解されることも多いと思われますので、ほかの言い方に直すなどの工夫ができるとよいでしょう。
「憮然」を「腹をたてる様子」として使うことは本来間違いです。
「広辞苑」ほか、多くの辞書でも「失望してぼんやりするさま」「驚きあきれるさま」という意味で載っています。
ですが、最近では「大辞泉」など一部の辞書で「不満なさま」「不機嫌なさま」という説明が加わっているものもあります。
本来は誤用である使い方がだんだんと認められてきているわけですね。
いずれどの辞書でも正しい意味と認められる日が来るかもしれないですが、今のところはまだこれは誤用ですので、気をつけて使いましょう。
「憮然」の使い方
「憮然」は「失望してぼんやりする」「驚きあきれる」という意味で使うのが正しいです。
「憮然として」「憮然たる」といった使い方が一般的です。
例文で使い方を確認しておきましょう。
【例文】
- 憮然として立ち去る。
- あまりのことに憮然として声も出なかった。
- 彼女は憮然としてその場に立ち尽くしていた。
- せっかくの努力が認められず、彼は憮然たる面持ちだった。
「悄然」との違いは?
「憮然」に似た言葉に「悄然」があります。
「悄然」は「元気がない様子」という意味です。
「しょうぜん」と読みます。
この二つの違いは、
- 「憮然」は「失望・落胆してどうすることもできないさま。驚きあきれるさま」
- 「悄然」は「元気が無く憂いに沈んでいるさま」
となります。
「憮然」には「意外なことに驚きあきれる」という意味がある点がまず違いますね。
あとは、「憮然」も「悄然」も「がっかり」という点では共通しています。
ですが、「憮然」は「失望・落胆」、「悄然」は「元気がない・憂い」という点で違いがあります。
「憮然」の方は失望し、がっかりしてぼんやりすることを意味しています。
それに対し、「悄然」はしょんぼりしとうちしおれているさまが強調される言葉なのです。
「憮然」の類義語
「憮然」の類義語には次のようなものがあります。
- 呆然(気が抜けてぼんやりとしたさま)
- 失望(望みを失うこと。あてが外れてがっかりすること)
- 落胆(気力を落としてがっかりすること)
- がっかり(ことが思い通りにいかず気落ちしたさま)
「憮然」の対義語
「憮然」の対義語は特にありません。
上で紹介した「憮然」の類義語たちの対義語は
- 「失望」←→「希望」「感動」
- 「落胆」←→「有頂天」「発奮」
- 「がっかり」←→「うきうき」
などとなりますので、状況によりこうした言葉が「憮然」の反対の意味に当たるかもしれませんね。
まとめ
「憮然」は「腹をたてている」という意味ではなかったんですね。
「憮然として立ち去った」ということは、怒っているわけではなくがっかりしたり驚き呆れたりして、何もすることができない状態で立ち去ったということになります。
「憮然」の本当の意味を知っているかどうかで随分受け取り方が変わりますね。
誤用が一般的になり、今や誤用とも言い切れなくなりましたが、ぜひ本来の意味や使い方を覚えておいてくださいね。
最後までお読みくださりありがとうございました!